【TESLA】サイバートラックでFSDを体験してみた(Cybertruck with FSD)

カリフォルニア州のテスラ正規ディーラーで、サイバートラックとFSD(Full Self Driving)を公道で体験する機会があったため、その内容をレポートする。

目次

ディーラーでの試乗

現在住んでいる地域では、割とテスラを見かけることが多い。インパクトがある見た目なので子供が相当気になっていたようだ。今回、家族でふらりと立ち寄ったショッピングモールでテスラのディーラーを見つけ、「入ってみたい」と子供が言うので訪問することに。そこで、モデルS、モデルX、モデルY が展示されていた。

テスラについては、2014年にモデルSをカリフォルニア・マリブで数日運転したことがあるが、その時は「電気で走る低重心なスポーツカー」って感じだった。そこから10年以上となる。当時は大型ディスプレイが縦置きで中央にドカンと置かれていたが、今は横置きになっていた。もちろん、プラットフォームや運動性能、ADAS機能に大きな進化があったとのこと。

しばらく子供が展示車をあーでもないこーでもないと弄っていたところ、営業マンから声をかけられた。子供がサイバートラックがあるか?と聞いたら「試乗してみますか?」と斜め上の回答をもらったので、試乗してみる事になった。

住所と免許を提示し、誓約書にサインすると、ディーラーの裏口に案内された。

営業マンは一通り説明をした後「では、30分くらいその辺運転して、戻ってきてくださいね。楽しんで!」と何処かにいってしまった。

運転してみると

試乗車で、かつ限られた時間ということもあり、詳細なインプレッションはできなかったが、ざっくりまとめると、

ステアリング

ステアリングの切れ角に驚いた。低速のみだと思うが、リアが逆位相で舵を切る仕様のため、慣れるまでは思った以上に小回りが効きすぎる感覚があった。しかし一度慣れれば、駐車時や狭路での取り回し性は非常に優れており、実用性も高い。

ワンペダル

アクセルペダルを離すと回生ブレーキが作動し、慣れれば市街地でほとんどブレーキを踏まずに走行できる。ただこれも、慣れるまでギクシャク。好みが別れるだろう。回生ブレーキの強さは設定で調整可能。

乗り心地

テスラのサスペンションは正直、微妙なフィーリング。微振動を拾う一方で、大きな入力時には各輪がばらばらに動く印象を受けたため、路面の荒れた場所を走りたくないと感じることもある。一応オフロード走行を想定して車高を変える機能は搭載されているものの、日常用途では使う機会はほとんどないだろう。個人的には、好みとは言いにくい。

パッケージ

全体的なパッケージとしては、良い車なんだろうと思う。積載量も多いし、見た目もゴツいし、小回りも効く。電気自動車なので毎日充電する前提で通勤でも使えそうだと思った。

FSD(フルセルフドライブ)

FSDとは、Full Self Driveの略。つい最近までは、FSDというのが機能名だったと記憶しているが、DMV (Department of motor vehicles:日本で言う陸運局みたいなところ)から名称使用に関する指摘があったようで、現在は FSD (Supervised)、すなわち「監視下での自動運転」という表現が用いられている。

FSDは、

フルセルフドライビング(スーパーバイズド)は、ドライバーによる能動的な監視の下で、ルート案内、ステアリング操作、車線変更、駐車などを含む運転操作をインテリジェントかつ正確に実行します。ちょっとしたお出かけ、通勤、長距離ドライブにご利用ください。現在ご利用いただける機能はドライバーの能動的な監視が必要であり、車両を自律的に動かすものではありません。

https://www.tesla.com/ja_jp/fsd

と言うことだが、まぁ一般的なイメージでは「自動運転」機能であり、運転者がちゃんと車を監視している状況でハンドル(ウィンカー含む)・アクセル・ブレーキ操作を車が行ってくれるシステムである(いわゆるLv2のフル支援バージョンであり、ドライバが車両の監視を免れるLv3ではない)。

公道でインテリジェンスを感じるFSD

運転支援系のシステムについては、割と最新のものをいち早く体験してきたという自負がある。実家の父にメルセデスCクラス(W205)を勧めたのも、2014年時点で最新の運転支援システムが搭載されていたからであるし、日産に搭載されている、高速道路でドライバーがウィンカーを出すと車線変更を自動で行ってくれる機能についても最新のものを運転して、知っているつもりだ。アメリカでも、車線維持+全車速追従機能付きのADASシステムは通勤や遠出にはもはや必須のシステムである。よって、ステアリング・アクセル・ブレーキを自動で操作してくれるものについては、「そうだよねー」程度だろうなと思っていた。

FSDのボタンを押すと、そのまま運転支援システムONとなる。車は設定された上限速度を目安に、現在の車線を維持しつつ加減速を行う。法規は国によって異なるが、アメリカでは「ハンドル、アクセル、ブレーキに手を触れずとも、そのまま走行する」という操作を想定している。これは、これまで体験してきた高度な運転支援システムと同様の感覚とも言える。

ところが、上記、右側通行の一般道で、3車線のうち一番右側レーンが右折専用レーンに変化するようなシーン。FSD を ON にして一番右を走行していたとき、右折専用レーンが出現する前に、車両は自動でウィンカーを出して中央の車線に車線変更し、そのまま走行を続けた。運転者がウィンカーを操作していないにもかかわらず事前にウィンカーを出してくれたため、挙動に予見性があり、安心感を持って乗ることができた。

限られた試乗時間ではよくわからなかったが、目的地が設定されていない場合には、道なり走行が可能なルートを自動で選択しているのか?それとも、前に遅い車がいたから単純に車線変更したのか?は不明ながら、結果として道なり走行を続けることができた。

さらに、交差点の信号を認識していることに驚いた。いままで乗ったことがあるADASシステムでは、前の車が信号で停止する際に、それに追従してい停止するものだったので先行車が居なければ赤信号でも停止しない(さらには、先行車に追従して赤信号でも行ってしまう)。FSDは、単独走行中に前に車が居なくても、赤信号を認識して停止することが出来た。

テスラの運転支援システム、FSD (Supervised)は、慣れた道でなくても「ああ、このクルマ運転上手いな、道のことわかってるな」と思うし、慣れた道なら「そうそう、その行動だよね」という感じをドライバ(というか監督者)に伝えるだろう。今までちょっと違う種類の「インテリジェンス」を感じた体験だった。

(1:02)勝手にワイパー作動(誤検知)
(1:20)遅い車に追いつき、自動で車線変更からの赤信号で停止

LiDARを使わないカメラのみでのADASシステムについては、人間を模したようなインプットなので、精度が向上すれば可能性を感じるし、信号での停止はカメラならではであろう。

心配があるとすれば、E2Eモデルの検証にある。従来のODD(動作範囲)を絞り込んだルールベースのADASシステムに比べ、E2Eモデルの再現性と納得性には課題が残る。すなわち、安全論証の際にValidであることが、E2Eモデルでどのように証明しているのかという点であろう。

いずれにせよ、短い試乗では正しく動いている用に見えるし、車両の運転に知性を感じるレベルであることは間違いないだろう。

まとめ

偶然立ち寄ったディーラーで、サイバートラックと FSD を体験する機会を得た。システムの内部仕様には依然として不明な点が残る(例えば、E2E モデルであると仮定した場合、開発者が各挙動を理由付けできるのか、など)。それでも、これまで経験してきた運転支援システムと比べて明らかに完成度の差を感じ、車に “知性(インテリジェンス)” のようなものを感じ取ることができた、非常に興味深い体験だった。

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