久しぶりの雑記。車両を誘導する時に、誘導する人はクルマの進行方向に立たないで欲しいという話。
私が住む地域は地方都市に分類され、日常の移動は車を使うことが多い。先日、娘が通う小学校でイベントがあり車で来校する際に校庭に駐車するように誘導された。校庭では、若手の教師が来校した保護者の車を校庭に引かれた駐車枠に誘導していたのだが、バックで駐車するように指示され、彼は車の真後ろに立って「オーライ、オーライ」。私が一度車を止めて「後ろに立つと危ないですよ~」と言ったところ、「大丈夫です~そのまま下がってくださ~い!」だった。大人しく誘導に従ったが、特に後退時に車の進行方向に立たれるというのは非常に怖い。
製造業や運送業に勤務されている方にとっては、車両の進行方向に立つことは禁じ手なのは常識だろう。新人の頃に同じことをして先輩に激しく注意された方もいらっしゃるかもしれない。よく、KYT(危険予知トレーニングの略。時代を感じる)の題材にもなっていることだろう。この記事ではバックで駐車する際の危険性と適切な誘導方法について記載する。
クルマの後ろに立ってバック駐車を誘導する危険性
バック誘導時の事故は製造業・運送業の現場で少なからず発生しており、動くもの(例えば車)の進行方向に立って誘導してはならない、としている現場も多い。というのも、車両を誘導中に轢かれてしまう事例はこれまで幾度と無く報告されているからだ。
仕事の現場でなくても、バック駐車の際に誘導者が車に轢かれてしまう事故も発生している。
事例
81歳の女性がバックで進行する軽乗用車を誘導していたところ、クルマと壁面の間に挟まれる事故が起きた。女性は近くの病院に収容されたが、まもなく死亡している。
https://response.jp/article/2010/08/31/144540.html
事例では加害者・被害者共に高齢者であることも要因の一つと考えられるが、車の進行方向に立って誘導するということは、自分の命を車の運転者に預ける行為であることを意識する必要がある。
バック駐車の安全な誘導について
誘導する必要がある場合には、車両の真後ろに立たない
トラックやバスなど、物流の現場では必要に応じて教育された誘導員が安全を確保するために誘導することが安全の確保につながる。また、人や車の交通量が多い道路に出る場合や、狭い駐車場に駐車する場合等、誘導された方が安全なケースも多い。警備員だけでなく、パートナーや友人が車両を誘導することもあるだろう。その場合は、どうか車の進行方向に立たせない・立たないでほしい。誘導する場合には、以下の図のように車両の進行する軌跡上に立たない。それだけで、重大な人身事故に至るケースは激減できる。
ハンドルを切った状態での誘導の場合もこの応用。車両の進行方向を予測し、進行方向に立たないような誘導を行うことで、誘導員の安全を確保できる。
一方で、近年の乗用車において広い駐車スペースにバックで駐車する際の過剰な誘導は不要であると考えている。以下2つ。
1)最近の車はリアビューモニター(リアカメラ)の普及に伴い目測を誤って下がりすぎて後ろをぶつけるリスクは低い。
2)万が一誘導をして事故を起こした場合には、誘導者にも責任が問われる可能性がある。
1.リアビューモニター(リアカメラ)の普及と義務化
日本では駐車する時に後方の目測を誤ったり、後方の歩行者に気が付かずに事故が起きている。平成20年~平成29年の間での後退事故による死亡者数は11,598人。重軽症者数は299,694人(ITARDA INFROMATION 交通事故分析レポートNo.128 より)。
2022年5月以降に発表される新型車についてはリアカメラの装着が義務化されている(新車でも、2022年4月以前に発表されている場合は2024年5月以降義務化)。また、2021年時点で、新車時のリアカメラの装着率は60%を超えている。
後方の死角を補う装備が充実することにより、バック駐車時に後方障害物を認識でき、苦手意識がなくなったという方も多いのではないだろうか。
リアカメラ作動時、あるいは取扱説明書には「周囲の安全は、必ず目視で確認してください」という注意書きがあるが、実際はリアカメラモニターに頼った駐車をしている事が考えられる。体をひねることが少ないので、アクセルとブレーキの踏み間違い防止にも役立っていると考えられる。
すなわち、近年の車では運転者は後方を安全に見ることができるため、目測を誤って下がりすぎて後ろをぶつけるリスクは低く、誘導の必要性は以前より低い。
後付リアカメラ
最近はニーズの高まりからか、後付で取り付けられるバックモニターが売られている。ドライブレコーダー機能付きのものが売られているので、バックモニターとドラレコを同時に考えている方は検討してみると良いだろう。
2.誘導員が事故の責任を問われるリスクがある
基本的には誘導員により誘導された場合であっても、事故発生時の責任はドライバーにあると考えられる。しかし、誘導員の誘導の仕方によっては、誘導した側が事故の責任を問われる可能性はある。
依頼者Xは、民間駐車場において、当該駐車場の誘導員に誘導された駐車スペースに、車両をバックで駐車しようとしたところ、当該駐車スペースの後部にコンクリートブロックが突出していたため、同ブロックに車両をぶつけてしまいました。そこで、当該駐車場の運営会社及び誘導員に対して損害賠償の支払いを求め、訴えを提起しました。
https://www.konishilaw.jp/column/5511/ より引用
(中略)
誘導員側には損害賠償請求ができないと思われる方も多いかと存じます。しかし、本件のように、事案によっては、誘導員個人や駐車場の運営会社の責任を追及できることもあります
誘導員が損害賠償請求されることがあるということだ。誘導する側も十分安全に配慮しておく必要がある。
余談
アメリカでは駐車の際には基本「頭から突っ込む」。そのため、駐車スペースからバックで出ようとする車の事故が多かった。そこでいち早く2018年からリアカメラ(リアビューモニター)の新車への装着が義務化されている。
最近は日本でも頭から駐車する車が多くなった気がするが、バックで駐車する車が多い。
日本のように、バックで駐車することにより、駐車に時間はかかってしまうというデメリットはあるものの、出庫時に左右の安全確認ができる。駐車時には駐車枠に対して交差して進入してくる車両の存在確率が低いため、バックで駐車した方が安全だと考えている。
結論
最近ではリアカメラの普及もあり、普通車のバック駐車時の不安は少なくなってきている。駐車場の誘導は円滑な交通と安全の確保のために大変ありがたいが、その誘導方法を誤ると重大な事故につながる可能性がある。そこで、「バック駐車時の誘導の際には車の進行方向に立たない」これだけは守ってほしい。
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