ブレーキフルードの選び方と、DIYでの交換とエア抜き方法

ブレーキフルードは水分を吸って経年劣化してしまうので、定期的な交換が必要。サーキット走行をした場合には1年に1回、そうでない場合には、最低でも車検の度に交換するのが望ましい。ブレーキフルードの交換作業はどんな車両でも基本は変わらないので、フリードスパイクを例にして、DIYでのブレーキフルードの排出とエア抜きの方法について記載する。

目次

ブレーキフルードとは?

簡単にいうと、ブレーキフルードはブレーキペダルが踏まれた際に増幅された圧力をブレーキパッドに伝えるための液体。とても重要なパーツである。くれぐれも、交換は慎重に。自己責任で。

ブレーキフルードは、時間経過とともに周囲の湿気を吸収して劣化してしまう。ブレーキフルードの劣化により多くの水分を含んでいると、ブレーキを踏んで高温になった際、フルード内部の水分が蒸発して気泡が発生し、ブレーキ液圧がかからなくなるベーパーロック現象の発生原因になる。通常の使い方であれば、車検の度に交換すれば良いと思うが、いずれにせよ定期的な交換が必要な油脂類である。

ブレーキフルードの規格と成分

ブレーキフルードに使われる規格で、DOT規格というものがある。DOT規格は米国運輸省(Department Of Transportation)で定めれら得ている規格である。日本で売られている車両のほとんどはこのDOT規格のブレーキフルードのうち、DOT3またはDOT4を使うこと、となっているのが一般的。DOT規格のうち、特に重要なのが「成分」「平衡逆流沸点」「ウェット沸点」。

成分:グリコール系がメイン。グリコール系は吸湿性が高いこと、塗装に対して攻撃性が高いため、取り扱いには注意が必要である。一部、シリコーン系のブレーキフルードがあるが、ゴム部品への攻撃性が高いこと、また、グリコール系のフルードと混合して使うことができないため、注意が必要。

平衡還流沸点(Equilibrium Reflux Boiling Point(ERBP)):普通に沸点と理解すれば良い。何度で沸騰するのかを示している。ブレーキ周辺は摩擦熱により高温になる。沸騰してしまうと内部の水分が蒸気になり、ブレーキ油圧がかからない「ベーパーロック現象」が発生する。沸騰がせずに持ち堪える温度が高ければ高いほど良いフルードということになる。

ウェット沸点(Wet ERBP):グリコール系は特に吸湿性が高いため、吸湿した後の沸点を表すウェット沸点も重要である

規格沸点(ERBP)ウェット沸点
(Wet ERBP)
DOT3205℃140℃
DOT4230℃155℃
DOT5.1260℃180℃
なお、DOT5はシリコンベースの規格なのであまり使用されない。DOT5.1はグリコール系含むノンシリコンの規格

基本は、マージンを持ってDOT4に適用したグリコール系のブレーキフルードを選択しておけばOK。私はWako’sを使うことが多いので、街乗りメインの車両はワコーズ BF-4を使用。

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サーキット走行が多い車両は、グリコール系でありながらもDOT5の沸点規格260℃に適用したワコーズ SP-4 スーパープロフォーを使用している。

ブレーキフルードの交換

ここからは、ブレーキの交換、およびエア抜きの作業について説明していく。ここでは、フリードスパイクのブレーキフルード交換の例で説明するが、どの車も基本的には変わらない。

必要な道具一式

ブレーキフルードの交換とエア抜き

ブレーキフルード:いつもWAKO’S製を使っている。今回はDOT4規格のフルードを選択

空のペットボトル:排出されたブレーキフルードを溜めておくために使う。

メガネレンチ:ブレーキのブリーダーバルブ(後述)を緩めるために必要。

ホース:ブリーダーバルブの先端に挿して使用する。ホームセンターで売っている汎用品

スポイト:フルード交換する時に余分なフルードを予め吸い出しておくためにあると便利

交換手順

車両をジャッキアップして、全てのタイヤを外しておく。

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ジャッキアップしたら、サイドブレーキを解除。作業終了まで、ずっとエンジンはOFF。ボンネットを開け、エンジンルーム内にあるブレーキのリザーバタンクを見つける。リザーバタンクには、ブレーキ用のリザーバタンクであることが書かれているので注意書きをよく読もう。なお、ブレーキフルードをこぼしてしまうと周囲の塗装にダメージを与えてしまうので、ウェスなどで周辺を保護する。塗装面についてしまったら、すぐ水で洗い流す事。

ブレーキフルードの交換とエア抜き

ブレーキフルードの色が少し茶色になっている。2年間交換していなかったのでちょうどよいタイミングだ。タンクに記載のMINのギリギリのラインとなるまで、スポイトを使ってフルードを取り除く。

ブレーキフルードの補充

新しいフルードを、リザーバタンクのMAXになるように注ぎ足す。

ブレーキフルードの交換とエア抜き

リアブレーキフルードの排出

ここからは、いつも妻に手伝ってもらう作業。ブレーキ踏み役と、排出役の人が居ると便利。一人でやる場合にはブリーダーキットなどを使う手があるのだが、どうしても若干のエアを噛んでしまうので、私はいつもブレーキ踏み役を妻にお願いして作業している。私はいつも排出役。妻と私は作業を定期的にやっているが、エア抜き作業だけで20分程度かかる。

リザーバタンクから「遠いところ」から作業するため、フリードの場合、リア左ブレーキからの作業となる。下図のようにリアブレーキのブリーダーバルブの先端に付いているゴムキャップを外して、メガネレンチをセットし、ホースを接続する。

ブレーキフルードの交換とエア抜き
フリードのリアブレーキのフルード排出。ブリーダーバルブは8mmのメガネレンチで緩める

ホースの先端は、空のペットボトルにつなげる。この状態でスタンバイ。

ブレーキフルード排出の手順

ブレーキ踏み役は、ブレーキを踏んだ状態でキープ。踏み応えが怪しければ何度か踏込を繰り返す。ここで、排出役に合図する。

②排出役はブリーダーバルブを1/4~1/2回転ほど緩める。すると、ブレーキフルードがブリーダーバルブから出る。ブレーキ踏み役は、ブレーキが奥に入っていく感覚になるが、構わず踏み続ける(誤ってブレーキを戻してしまうとエア噛みするので)。

③ブリーダーバルブを締める。締めたら踏込役に合図をし、踏込役はブレーキから足を離す。

④排出された分、リザーバタンクのフルードが減るので、MINを下回らないように注意する。減ってきたら、MAXとなるように注ぎ足す。

⑤.排出されるブレーキフルードが新品の色(透明)になるまで、①に戻って作業を繰り返す。排出されるブレーキフルードの色が透明になったら終了。

フロントブレーキフルード排出

リア左が終わったら、次はリア右、でリアセクションが終了。続いてフロントブレーキ側。これも、リアと同様の手順で実施する。

ブレーキフルードの交換とエア抜き
フリードのフロントブレーキのフルード排出。10mmのメガネレンチで緩める

途中で誤ってブレーキフルードMINを下回らないように注意しよう。もしMINを下回ってしまったら、エアを噛み込んでしまっている可能性があるので、もう一度リアからやり直しとなる。

今回排出したフルード。2年間使うとブレーキフルードもこんな色になってしまった…相当汚い。

ブレーキフルードの交換とエア抜き

WAKO’SのBF-4を1L用意し、500mlのペットボトル2本分を交換して完了。最後にリザーバタンクのにフルードがMAXとなるようにして終了。MAXとせずに、もともとのフルードが入っていた量に合わせることでブレーキパッドの減りを知る手がかりとなるそうだが、そもそもブレーキパッドは定期的に残量をチェックするので全く気にしない。

エア抜きの場合

エア抜きの場合も作業は基本は変わらない。サーキット走行後等のフィーリングがエア噛みによるものであると、この作業をやると改善する。エア抜きだけを目的とするのであれば、ブレーキフルードの排出手順の繰り返し回数を少なくしてエアが出てこなくなったら完了。

まとめ

ブレーキフルードは性能の良いものを使ったとしても、劣化していくので交換は2年に1回は必ずメンテナンスしたい項目。車検のたびに実施するのが良いだろう。サーキットを走行する使い方であれば、1年に1回は実施したい。ブレーキフルードを交換すると、ブレーキタッチが新車のフィーリングに戻る。は好みの問題だが、個人的にはサーキットや街乗りの車両問わず、ケミカル類はWAKO’S製をずっと使用しているので、今回もWAKO’S製を選択した。

DOT4に適用したグリコール系のブレーキフルードワコーズ BF-4

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サーキット走行が多い車両は、グリコール系でありながらもDOT5の沸点規格260℃に適用したワコーズ SP-4 スーパープロフォー

値段もそれほど変わらないので、純正ケミカルにこだわりたい、という方にはHAMP(ホンダ)ブレーキフルード ウルトラBF DOT4 1Lをオススメする。

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