S660は、とにかくよく曲がるコーナリングマシンである。純正で装備されたタイヤを履いて旋回したときのGは1G以上。純正のシートでは上体が安定しない。左右の膝で踏ん張ることになるのだが、右膝ドアの出っ張りに干渉するし(私の場合、ちょうどドア内張りの出っ張っているところに右膝が当たる)、左膝はセンターコンソールに当たって痛くなってしまう。
身長が172cmであるが姿勢を正して(背筋を起こして)運転すると天井に頭が当たってしまう。サーキットでヘルメットをかぶったときに、これはでは運転できない…ということで、コーナーを楽しく走れる車両に仕立てるため、シート交換を行った。
S660ドライビングポジション最適化まとめは以下の記事を参照
バケットシートに求めるもの
バケットシートに求める条件を絞り込み。後部座席がない2シーターであることからリクライニング機能などは一切不要。ということでフルバケットシート(フルバケ=リクライニングしないやつね)に求めるものとしては
- 旋回時に体をしっかりホールドしてくれること。特に、膝が内装に干渉しないこと
- 着座位置を下げてくれること
である。
S660に装着できるフルバケットシート
S660は軽自動車規格であり車内は狭く、装着できるバケットシートには制約がある。検討したのが、エスケレート・レカロ・ブリッドの3社。
モデル | *純正からのダウン量 | ホールド性 | その他 | |
エスケレート | TYPE-660 | 35mm | 低い | 個人的にデザインがイケてる。 乗降性も良さそう |
レカロ | RS-G | 40mm程度 | 高い | ハンドルの中心から、 オフセットしてしまう |
ブリッド | XERO-VS | 30mm程度 | 高い | 使い慣れたBRIDE。 ただし、太ったので入るか… |
まずエスケレートから。マツダのロードスター(NA/NB)のバケットシートで知名度があるブランドである。S660のバケットシートも作成しているようだ。NAやNBのロードスターに装着されたモデルに座ってみたことがあるが、少し寝気味だし、ホールド性も他のバケットシートに比べて低かった。逆に、乗降性を重視しながら純正より高いホールド性の高いものを、というニーズであれば良いと思う。デザインもセンスが良い。街乗り中心で、という方には一番オススメできる。
レカロは、オフセットが気になるのと、少し寝気味な形状をしているため選択対象から外した。
結局、一長一短あり、個人的な好みで選べば良いと思う。個人的には、街乗りならエスケレートで、サーキットならブリッドを選択する。
なお、S660後期型(車検証の型式が 3BA-JW5 )の場合は、助手席をバケットに変更する場合は、シートベルトリマインダスイッチの移植が必要っぽいので注意。
BRIDE XERO-VSに決定!
私がマツダロードスター(NB8C)でサーキット走行のために10年使ったのがBRIDE製(VIOSⅢ現在は廃盤)だったので、今回もBRIDEを第一候補とした。XERO-VSであればS660に干渉なし/オフセットなしで装着できる。別途、A.I.R.という商品が出ていたが、ちょっと寝気味に見えた。個人的には、立ち気味の方が好みなのでこちらは却下。ということで、XERO-VSを手配。
ちょっと値段は高いけど、コーナリングマシンであるS660を楽しむなら、優先度が高いアイテムだ(私は、クルマの部品を変更するときにまず最初に手を入れるのは、ドライバとクルマをつなぐインターフェース部分からである)。BRIDE XERO VSは内装への干渉もほぼ無し(布部分が触れている程度)。センターバッチリ出る。
適合のシートレール(運転席側)もセットで。なお、シートのエアバッグキャンセラは付属しないので、汎用のものや自作する必要がある(後述)。
で、、、デカイ箱が来た。テンション上がる
BRIDE XERO-VSをS660に取り付け
バッテリー外し
今回シートの交換のためにサイドエアバッグを外すので、バッテリー端子を外す。まずはユーティリティボックスを取り外し。
ユーティリティボックスの中にある銀色のネジを4箇所緩めてボックスを引き抜く
バッテリーが見えるので、上部のプラスチック部品を外す。
10[mm]でマイナス側を緩めて、養生テープで端子を絶縁&5分ほど放置。
純正シート外し
これは割と単純。幌フルオープンしておく。その上で、前方にシートをスライドさせ、リア側のナットを外す
その後、シートを後ろにスライドさせて前側のボルトを外す
シートを軽く浮かせて、ハーネスを止めている内装クリップをラジオペンチで外す。次に、下にあるカプラを外す。黄色いカプラがシートエアバッグ用、白いカプラがシートベルトセンサ用。黄色いコネクタは、コネクタの黒色の部分をスライドさせて引っこ抜く。白いコネクタは、下写真の左側に爪があるのでそこを抑えて抜く。
あとは、ぶつけないようにそーっとシートを抜き出す。
エアバッグキャンセラの作
BRIDEのシート、シートレールにはエアバッグキャンセラが同梱されていなかったので、手持ちの部品で作ることにした。
【自作エアバッグキャンセラ用部品】
ヒューズホルダーおよびヒューズ(2A) |
2Ω抵抗 |
住友電装025 ハーネスピンオスメス2本ずつ |
熱収縮チューブ(適量) |
エアバッグの純正の抵抗が2Ω。抵抗が既定範囲外だと断線検知してしまい、エアバック警告灯が点灯する。エアバッグ警告灯が点灯していると車検に通らない。そこで、エアバッグユニットと同じ抵抗値を持つ「ダミー」(エアバッグキャンセラ)を取り付けてやる。よくヤフオクなどでも出品されているので楽をしたい方は購入するのが良いかもしれない。私は手持ち部品があったので、こちらを使って作成することにした。費用は500円くらいか?上の写真では、手持ちのセメント抵抗を使っているが、もっと小型の金属皮膜抵抗が安く売っているのでそちらを選べば小さく作れる。2Aのヒューズをセット。走行中、万が一エアバッグの車体側が地落した事を考えて、これは必ずやろう。
メス端子を抵抗にセットして
かしめる(老眼入ってきて、この作業が辛かった…)手元が、見えない。
ピンのカシメ方については、下記記事参照。
はんだ付けする。これも、老眼が辛い…
熱収縮チューブで保護。
2.4Ωになってる…なんでだろ。ま、誤差範囲でしょう。
所望の抵抗値を得られたので、エアバッグ端子車体側に差し込む。
あとはハーネステープで保護するとともに、カーペットをちょっと切ってタイラップで固定。
キャンセラーの動作確認
クラッチを踏まずにエンジンスタートボタンを2回押す。直後にエアバック警告灯が点いて(イニシャルチェック)、
数秒後に消灯すれば、OK
シートベルトキャッチャーの取り外し
↓の部品を取り外す。クリップを丁寧に取り出そうと思ったが、そういえばどうせバケットシートに取り付ける時、クリップが無い方がスッキリするのだから、とクリップは破壊してもOK。
万が一、純正シートに組み戻すときのために、ネジの順番を記録しておく↓
シートレールの組み立て
説明書が丁寧に書かれているので、特に苦戦することは無いと思う。シートレールを組み立てる。センターを出すため、最も窓側に寄せてみた。まずはシートをつけずに、レールだけを「置いてみる」。
シートベルトキャッチャーはこんな感じになる。
大体道筋が見えたら、シートを取り付ける。今回は、3段ある穴のうち、前後真ん中で取り付け。この穴のどれを選ぶかで高さ、前後のバランスを変えられる。経験的に、真ん中。いろいろ試して決めるのが良いと思う。
仮載せで、シートレールが平行になるように、ネジを均等に締め込んでいく。
ちょっと表現が難しいが、ネジを締めると、ネジ込む回転でシートレールが歪んでしまい、スライドが渋くなる。ということで、締付けのトルクを調整することが必要。
また(これ大事)、前方のネジを締める際には、シート位置をできるだけ前に、後方のネジを締める際にはシート位置をできるだけ後ろに下げておくのがコツ。これによって、シートレールの歪みを小さくできる。
クリアランス
今回できるだけ窓側に寄せた。ドアは問題なく閉まり、表面の生地がドアの内張りに”触れている”程度となった。この辺がステアリングの真ん中あたりだったので、そのように取り付けた。
最後に、最適な位置を忘れないようにマーキング
インプレッション
これ、今までで最高。アイポイントが下がった。乗降性は当然ながら悪化するが、一度乗ってしまえば、快適そのもの。最も重要な横のホールド性能も完璧。膝で体を支える必要がなくなったので、コーナーの楽しさが向上する。頭部のクリアランスも良い感じ。これはマストアイテムだと思う。運転は最適なドライビングポジションから。
S660ドライビングポジション最適化まとめ
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