車両から電装品の電源を取得する方法としてシガーソケットからの電源取り出しや、エレクトロタップなどがあるが、シガーソケットのタコ足配線だとインパネ周りが煩雑になるし、エレクトロタップは断線リスクが高く、個人的にはオススメしない。
自分で車両ハーネスを作ることができれば、ETCやドライブレコーダー、追加メーターの取付自由度が格段に上がる。また、オーディオを移植するためのハーネスを自分で作成して取り付けたり、ホーン交換の際のハーネス加工もできるようになる。自動車の電装系をイジるための基礎知識として、押さえておきたいポイントと、自作で電源・信号ハーネス(電線)を作成する方法を解説する。
主な自動車用電線の種類と太さ
主に車両用で使われている電線には、その用途に応じて様々な種類がある。よくDIYで使われているのが12Vを中心とした低圧電線で、ビニールの絶縁体で覆われているもの。これにもいくつか種類がある。
電線の種類
主に使用する電線として、以下を覚えておけばまずはOK。
種類 | 概要 | ざっくりとした用途 |
---|---|---|
AV | 普通の配線コード | DIYは大体これか、下のAVSを使う |
AVS | 配線コードの肉厚が薄いやつ | 純正オーディオ、あるいは短い距離をつなぐハーネス |
AVSS | 配線コードの肉厚がもっと薄いやつ | 車両の制御ユニット、あるいは長い距離をつなぐハーネス |
最近の車では、制御ユニットの数が増えており、車両内にハーネスを張り巡らせる時に厚い電線だと配線できなくなってしまう。また、軽量化のためにも、絶縁体部分は薄いほうが好ましいため、AVS電線やAVSS電線で使われている。よって、DIY用途であれば、基本はAV電線が適している(ショートしにくい)。場所によって使い分ければよい。
電線の太さ
電線の太さは、sq(スクエア、スケア)で表される。これは、導体(電線の中身の電気を通す部分)の太さを表している。「◯スケ」(◯は数字)って読むことが多い。sqによって流せる電流量が変わってくるので、使用する電装品の消費電力を把握しておくことが必要だ。電装品に付属の配線を加工する場合、付属の配線と同等以上の太さの電線を使うようにすること。電源系の場合、細いと発熱して燃える恐れがある。電線は太いに越したことはないが、車に載せる前提の電子機器の場合、消費電流が書かれている事が多いので、その数値を参考にして使う電線の太さを決める。
よく使うエーモンの電線には、許容される電力が記載されている。エーモンの配線コードを12V車両で使う場合、接続する電子機器が4Aであれば、4A×14V(車のエンジンON時の電圧値)=46W以下の使用可能電力を持つ電線を使えば良い。電線長さによる抵抗増など若干の余裕を積んでおくのが良いだろう。
端子の種類
DIYで社外品の電子機器を接続したり、電源を取得したりする場合によく使われるのが、丸型端子・ギボシ端子・平型端子。
丸型圧着端子
大電流を流すための太い電線を使う際に用いる。バッテリーやバッテリー直下のヒューズボックスから電源を取り出す際にネジと共締して使う。
使用例:フリードのバッ直電源取り出し
ギボシ端子
よくオーディオユニットや電装品の車体との接続に使われている。
平型端子
ホーンの接続や、スピーカーの配線で使われていることが多い。
丸型端子
集中アースなどによく用いる。ネジと共締して使う。
クワ型端子
手が入りにくいボディアースなどのネジに共締する際に利用することがある。集中アースのボルトを外したくない際、ボルトをちょっと緩めて差し込んで利用する。万が一ネジが緩むと抜けてしまうので、個人的には丸型端子を使う。どうしても、っていう場所以外使うことはない。
端子のカシメ方
端子を電線に取り付けるために必要な作業が、カシメ。これには専用の工具が必要となる。
丸型端子・ギボシ端子・平型端子をカシメるのに必要なエーモンの電工ペンチ。殆どの端子はこれで事足りる。
ワイヤストリッパで導線を露出させる。ホーザンのワイヤストリッパはちょっと高いが、精度が非常に良い。挟み込んで引き抜くと、スパッ!と導線を出すことができる。とても気持ちいい。
丸型圧着端子の圧着方法
丸型圧着端子は、エーモン発売されているものを利用する。
ワイヤストリッパで配線の導線を露出させ、電工ペンチで潰す。
オプションでハンダ付けして完成(やらないで済む位キチンとカシメられていれば不要。通常のハンダ付けの様にハンダを銅線に染み込ませるような付け方をすると、逆に銅線に柔軟性がなくなり、振動で破断する恐れがあるので、あくまで抜け防止の為に軽く乗せる程度)。
圧着端子以外の丸型端子・ギボシ端子・平型端子のカシメ
ここでは、ギボシ端子をカシメる例で説明する。使用したギボシ端子はエーモン製。
カシメる方法は丸型端子・平型端子も同じで、下図のように2箇所を電工ペンチでカシメる。
ワイヤストリッパで配線の導線を露出させ、ビニール製の透明の絶縁体を先にハーネスに通し、ギボシ端子に電線を差し込む。差し込んだら、電工ペンチでカシメる。上記写真の右側矢印は導線に噛み込むように、右側の矢印は被覆部分に噛み込むようにカシメる。下写真は導線に噛み込むようにカシメた写真。
次に被覆部分にカシメる。カシメ終わったら、付属の絶縁体をかぶせて完了。
メス側も同様にカシメて完成。
端子のメス・オスについて
端子には、メス端子・オス端子が存在している。必ず、電源の供給側=上流側(車でいうと、+12Vを供給する側)にメスの端子を使うこと。理由は、オス端子は端子の金属部分が露出しているため、電源を供給する側に使ってしまうと、ボディに触れてショートしてしまうから。
電源が供給される側(電装品側)がオスの端子、電源を供給する側は必ずメス端子を使う。
まとめ
ハーネス(電線)作りの基礎と端子のカシメ方について解説した。この様に、様々な端子を一つのツールでカシメることができる。
配線の作成が全く初めてというのであれば、様々な端子が入ったセットを買っておくと大体のハーネスに対応できる。セットで買っておいて、使った端子分だけ買い足していくと、いざという時に困らずに済む。
以下に、私がストックしている物をいくつか紹介しておく。
エーモン 配線コード
使用できる電流がリールに書かれており、使いやすい。使用用途に合わせていくつかストックしている。
エーモン丸型圧着端子
バッテリーからの電源取り出しなどに用いる。
エーモンギボシ端子セット
オーディオ周りや、電源取り出しなどで大量に使う。簡単にカシメられるのでとても便利。安いものなので使ったら補充して常にストックしている。
Φ6mmとΦ8mm 320個入れ端子セット C型(クワ型)丸型 端子
多分生涯で使い切れない程たくさん入っていてお買い得。アース配線は全てこれを使っている。
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