私のS660は、シートポジションの最適化を目的として、純正シートからBRIDE XERO-VSに変更している。
シート交換についての記事はこちら↓
ここで気になるのが、ステアリングとの距離と、純正ステアリングの太さである。
ステアリング距離に関しては、最近の車はエアバッグの展開幅を考慮し、ステアリングとドライバの距離が遠い。これでは素早いステアリング操作ができないし、操作時に肩がシートから離れてしまうため、限界領域での操作感には不安が残る。また、最近のホンダ車のステアリングは太くなっている傾向。街乗りでは問題ないが、サーキットでレーシンググローブを装着して操作することを考えると、どうも純正ステアリングは太すぎて握りにくい。
この記事では、S660のステアリング交換に必要な部品、およびその交換方法を記載する。今回は、NB8C、987ボクスターと、今まで所有してきた車を渡り歩いてきたお気に入りのステアリングである、NARDI クラシックの34Φへ交換することにした。グリップはレーシンググローブを装着した状態で丁度良い太さで気に入っている。
純正ステアリングから社外ステアリングへ交換するために必要な部品
ステアリング
好みのステアリングを選択する。今回は、ナルディクラシック 340Φシリーズのパンチングレザー(型番344)を投入した。S660のステアリング径は純正+αのクイックを求めるのであれば340mmがベストと思う。NARDIは細身で好み。これまで乗り継いできたNBロードスター、987ボクスターには340mmのナルディクラシックを使用してきた。
もっとクイックにというのであれば、最新の330mmも気になるところ。
純正同等のフィーリングが気に入っているのなら、350mmのMOMOも捨てがたい。こちらもNB8Cでしばらく使い込んだことがあるもので、お気に入りの一品。この記事で紹介しているステアリングボスを使えば、このステアリングも装着可能。
私はアルトワークスにはMOMO、S660にはNARDIを使用している。
ステアリングボス
ステアリングボスは老舗のワークスベル製のもの一択(普通のやつでも、RAFIX用のショートボスでもお好みで)。万が一の衝突の際に、ステアリングが運転者にぶつかってしまった時も「うまく壊れる」ことにより、運転者への被害を軽減するように設計されている。また、精度が求められる部品であるため、ここはしっかりしたものを採用したい。車検対応、エアバッグキャンセラー、ホーン配線付き。
ワークスベルのステアリングボスは、NARDIとMOMO/SPARCO/OMP等、ほぼ全ての社外ステアリング取り付けに対応している。
スペーサー
ステアリングの前後位置の微調整に必要なパーツ。ステアリングが微妙に遠かったので30mmを一つ噛ませている。
ステアリングスイッチ移設ハーネス(販売のお知らせ)
この記事では、こちらのステアリングスイッチ移設ハーネスを使用しています。
ステアリング交換作業手順
一通りパーツが揃ったら作業に取り掛かる。
バッテリーマイナス端子外し
S660のバッテリーは、フロントフードを開けただけではは見えない。幌を格納するフロントのユーティリティボックスの後ろにあるためだ。
ユーティリティボックスを取り外すと中央にバッテリーが見える。
↑画像の黄色で囲われたバッテリーのマイナス端子側(黒い方)を外す。プラス側(赤いキャップがついている側)はバッテリー交換の時以外、基本は触らない。ちなみに慣れると、ユーティリティボックスを取り外さずにバッテリーのマイナス端子を外すことができる。
バッテリーのマイナス端子は奥まっていて工具が入りづらい。ラチェット機能付きのコンビネーションがあると非常に楽。世の中の殆どのクルマのバッテリー端子が10mmなので、これ一本あれば応用が効くし、臨時用の車載工具としても役に立つ。見て分かる通り手のひらにすっぽり収まり、ラチェット機構がついている。
外したバッテリーのマイナス端子は、養生テープで絶縁しておく。
エアバッグ及び純正ステアリングの取り外し
必要な工具類
手前のT30のトルクス、10mmのヘキサゴンレンチがマスト。ステアリングのボルトはネジロックが塗布されているので、大きなトルクをかけられるように、スピンナハンドルがあると良い。30N・mを計測できるトルクレンチがあると、締めるときに安心。
ここに、トルクス T30突っ込んで回す。左右それぞれ緩めると、エアバッグがボロって取れる。大体の車両のエアバッグはコレで外れるので、持っておいて損はない。
エアバッグが取れたら、下図の赤矢印部分をつまんで引き抜く。
次に、ホーンのカプラを引き抜くと、エアバッグと分離が可能。配線が二箇所してあるので、それぞれ外す。
続いて、ステアリング本体を取り外す。
10mmヘキサゴンレンチとエクステンションバー、スピンナハンドルでエイッ!で外れる。ネジロックが塗ってあるから、ちょい固め。これを外すためのヘキサゴンレンチは高い精度が必要。信頼のおけるメーカーのものでないとナメそうなので注意。私はずーっとKTCのものを愛用している。
センターボルトを外す前に、センターボルト上部のカプラを外しておく。
次に、センターボルトが緩んだら、一度センターボルトを取り外し、ステアリングの取り外しの際の位置をマジックなどでマーキングしておくと、戻すとき楽。外すときの勢いで顔面にステアリングをぶつけないように、再びセンターボルトを数山だけ再度しめてエイヤっって引っ張ると、ガコって抜ける(今回は新車なのでスルリと抜けた)。
ステアリングスイッチの取り外し
取付の際にセンターがわかるようにマーキングしておくと良い。(下図ピンク色の印)
スイッチ類は、移設するために取り外しておく。更に今回は、ステアリングコラム周辺のカバーも外しておく。
ステアリングコラムカバーの外し方
メーターパネルは養生し、下図に箇所に内装剥がしツールを突っ込んでパカッと外す事ができる。
上側のステアリングコラムカバーが外れる。
安価なものでいいので内装剥がしツールがあると、傷つけずにはがせる。↑写真はKTCのやつだが、初めてDIYで作業するにはちょいと高い。しかし、特に樹脂の内装パーツはキズがつくと目立つ。内装を剥がす必要がある場合、要求される精度が他の工具に比べてそれほど高くないため、安価なセットで揃えてみるのが良いと思う。
使用頻度が高い人には、こちらの記事で紹介したセットがオススメ
今度は下側のカバーを外す。プラスネジ3本で止まっているので緩めれば外れる。まずは上側のカバーのプラスネジ2本を緩める
次に、下側のプラスネジ1本を緩める
手前に引き抜くと、下側のステアリングコラムカバーが外れる。外れたら、ケーブルリールに接続されている20ピンのコネクタを外しておく。
ステアリングスイッチの取り外し
ステアリングスイッチを取り外す。プラスチックの部品で繊細なので注意が必要。下図赤◯を精密ドライバーで広げて取り外していく。
取り外された部品たち。結構な量がある。
ステアリングコラムにスイッチを移設
ステアリングコラムカバーにスイッチを移設するための加工を行う。穴を開ける位置を決めれば、樹脂部品なのでそれほど苦労することはない。穴を開ける位置は、ステアリング向かって左側。
ステアリングスイッチ移設ハーネスの作成と、コラムカバーの穴あけ加工が必要。方法はこちら。
「自分でハーネス作るのメンドクサ!」って方のために、この記事で紹介しているS660β用のステアリングスイッチ移設ハーネスを販売しています(コラムカバーへの穴あけ加工が必要)。
さて、ここまでできたら、次はステアリングボスの取り付け。
ステアリングボス取り付け
使用するステアリングボスは、ワークスベル一択。
エアバッグキャンセラや、ホーン用のハーネスも同梱されているので、取り扱い説明書通りに接続する。ホーン用のコネクタの配線が、下写真の左側のようなピン配列であれば、先程作成したステアリングスイッチ移設ハーネスを使うことができる。
ホーン配線
他のステアリングはホーンボタンの形状などにより若干異なることがあるが、基本はステアリングおよびステアリングボスに付属の部品で取り付けできるはずだ。
ホーン用ハーネスとエアバッグキャンセラを接続して、ステアリングボスを取り付ける。センターがズレないように注意。合わせたら、ネジを締め込む。ワークスベル指定のトルクは30N・m。純正のトルクより少ないので締めすぎに注意が必要。
ホーンのアース配線
ナルディクラシックについていたホーンボタンのアースリングをそのまま使うのが良いだろう。私は誤って捨ててしまったのでホーンリング(モモ用)を加工して使った。捨ててなければ以下の無駄な苦労は不要。
以下のように切込みを入れ、その切込みの間に、丸型端子に付け替えてアース配線を取り付けた。
丸型端子も、アースリングもどちらも厚さ0.5mmなのでガタなく取付可能。
ステアリングスペーサーとステアリングの取り付け
ステアリング交換の目的の一つに、バケットシートで遠くなったステアリングを近づけたい、というのがあった。ということでスペーサー30mmを挟んでから取り付けることとする。
ナルディのホーンボタンの取付で苦労しないように、組付けの向きに注意。ステアリング関連のパーツは、横から見たときにテーパー状になっているものがある。ワークスベルのステアリングスペーサーも、裏面と表面で、穴の大きさが違う。測ったら1mmの違いがあった。
どちら側をドライバに向けるか、は注意しておきたい。ナルディのホーンボタンは結構キツキツに入れる必要があるから、広い側がドライバに向くように取り付ける。狭い側を選んでしまうと、ホーンボタンは入らないのでやり直しになる。
ホーンボタンの取り付け
ステアリングを均等のトルクで締めたら(これ、細いネジだからオーバートルク注意ね)、
ネジを隠すためのカバーを取り付け
ホーンのスイッチ側ハーネスを接続。
ここからちょっと慣れが必要な作業。ホーンボタンを入れるのに「コツ」がいる。ナルディのホーンボタンは、右上、左上、下の三箇所に突起がある。私の場合は、下と左上の突起を先に入れておき、あとから定規をホーンの右上の突起の間に差し込んで(下図)、引き抜きながらホーンボタンを押し込む。そうするとピタっと入る。
動作確認
以下点を確認する。
1)エアバッグ警告灯が、エンジン始動後数秒後に消灯すること
2)リモコンのスイッチ類がすべて動作すること(ライトON/OFFによるイルミネーション含む)
3)クラクション(ホーン)が鳴動すること
4)ステアリング取り付け時のガタがないこと
5)走行時のステアリングセンターに異常がないこと
これで完成。
ステアリングの新旧比較
純正ステアリング:350mmよりちょっと小さいくらい
ナルディクラシック:340mmより、ちょっと小さいくらい
ステアリングはひと回り小さくなり、ちょっとクイックになった。また、ステアリングポジションもスペーサーにより手前に来ている。
これで完成。ポジションが最適化されて、とても運転しやすくなった。また、ステアリングの太さも純正に比べて細身で持ちやすい。レーシンググローブをつけると「コレだよコレ!」という感じ。
純正ステアリングから社外ステアリングへ交換するために必要な部品
ステアリング
好みのステアリングを選択する。
私はアルトワークスにはMOMO、S660にはNARDIを使用している。
ステアリングボス
ステアリングボスは老舗のワークスベル一択。万が一の衝突の際に、ステアリングが運転者にぶつかってしまった時の被害を軽減するために「うまく壊れる」ように設計されている。また、精度が求められる部品であるため、ここはしっかりしたものを採用したい。車検対応、エアバッグキャンセラー、ホーン配線付き。
NARDIとMOMO/SPARCO/OMPでは、ステアリングをボスに取り付けるためのネジ穴の位置が異なるため最終的には現物での確認が必要だが、ワークスベルのステアリングボスはほぼ全ての社外ステアリング取り付けに対応している。なお、ラフィックスも配線は同様なので対応可能。
スペーサー
ステアリングの前後位置の微調整に必要なパーツ。ステアリングが微妙に遠かったので30mmを一つ噛ませている。
ステアリングコラムカバー
ステアリングコラムカバーに、スイッチ取り付けのための穴あけ加工を行うことになる。純正に戻したい時、あるいは失敗した時のために、純正のステアリングコラムカバーがあると安心。
関連記事
ステアリング径によるフィーリングの違いはこちら
自作でハーネスを作りたい、という方のために作成方法をこちらのページに記載
ギボシ端子や、GND端子のカシメ方法はこちらの記事を参照
コネクタの作り方はこちらの記事を参照
S660βの場合、純正にこだわるならS660αのステアリングに交換するのもアリ。交換方法はこちらの記事を参照。
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