ステアリング交換のメリットと小径化後の操作フィーリングの比較

ステアリング交換の目的は、ステアリングの「クイックさ」の変更と、グリップが変わることによる操作性の向上である。この記事は、これからステアリング変更を検討している方や、社外品でどれくらいの径(φ(ファイ))のステアリングを選べばよいか悩んでいる方へ、ステアリング交換の効果やフィーリングの違いなどを解説している。

目次

ステアリング変更の目的と効果

そもそも、なぜステアリングを交換するのか?である。もちろん、レーシーな雰囲気を楽しみたい!というのもあると思う。しかし、一番の目的は「操作フィーリングを自分好みに改善する」ためだ。

ステアリングを小径化すると何が変わる?

小径のステアリングに交換すると、「同じ舵角を、少ないステアリング移動量で達成できる」ようになる。一般的には、ステアリングを小径化すると、以下の図のような変化が発生する。

青色の円が大径のステアリング、赤色の円が小径のステアリングをイメージしている。ここで、例えば45°ステアリングを切る事を考えてみると、小径(赤色)のステアリングは「外周の移動量」が小さい。すなわち、同じ45°の操作をする際に、同じ操作速度でステアリングを操作した場合、小径の方が素早くタイヤが切れるということを意味している。

結果、ステアリングを45°切る、という操作に対して、小径化すると「クイック(quick)」なフィーリングを実現できるというわけだ。一方、大径では移動量が大きくなる分、「ダル(dull)」なフィーリングになる。

ちなみに、同じ45°の操作をしているわけだから、ステアリングの角度とタイヤが切れる角度は変わらない。「ステアリングを小径化すると少ないステアリング角度で曲がれるようになった」という表現は間違いで、「少ないステアリング移動量で曲がれるようになった」が正しい。

また、最近のクルマのステアリングは太すぎると感じる。社外ステアリングに交換すると、グリップ(握り)が変わることにより、自分好みのセッティングをすることができる。これもステアリング交換の大きなメリットとなる。

ステアリング小径化のメリットとデメリット

ステアリングを小径化するメリットは、「クイック」なフィーリングを得ることができること。これにより、フロントタイヤのグリップをしっかり感じ取れている状況では、ノーズがスッと素早く入り込むようなフィーリングとなるため、ゴーカートのような感覚となる。

一方でデメリットとしては、「クイック」ということは「遊びが無い」ということ。1度あたりの分解能が小さくなるため、繊細な操作はしにくくなる。特に、スライド量に応じて咄嗟に正確なカウンターステア操作が求められる場合、人は意識していないとカウンターを当てすぎてしまうもの。慣れない小径ステアリングで適切なカウンターを当てるのは、結構難しい(当てすぎでお釣りをもらったりする)。

また、これは好みの問題だが、ステアリング径を小さくすると、操作に必要な力が重くなることにも注意が必要だ。少し重めのフィーリングが好みという人もいるだろう。

どれくらい小径化すればよいかを考える

ステアリング小径化のメリット・デメリットを把握したところで、では、どれくらい小径化すれば好みのフィーリングを得られるのか?は気になるところ。市場では様々なステアリングが売られているが、個人的には純正ステアリング径を把握した上で、自分好みにカスタマイズするのがベストだろう。

純正のステアリング径と同等~マイナス20mmあたりの範囲で選んでおけば、クルマメーカーのエンジニアが想定している範囲の操作性を大きく損なうことなく、好みのフィーリングを得られるのではないかと思う。

S660の場合を考えてみた

S660純正ステアリング・ナルディクラシック340mm・ナルディクラシック330mmでそれぞれ運転してみた。あくまで個人的な感想であるが、ステアリング交換を検討している人の参考になれば幸いだ。

私のS660は、純正車高、タイヤは純正とほぼ同等のグリップDIREZZA Z3。トレッド幅なども全て純正のまま。

S660 350mm純正ステアリング

S660の純正ステアリング径は350mm。

これには、Hondaもこだわりがあるようで、S660のステアリングサイズはたしかに小さめだ。

Honda最小径・握り心地の良さにこだわったステアリング

バスやトラックに大きなステアリングがついている第一の理由は、ドライバーが大きなクルマとしてのゆっくりした動きを命じるため。ステアリングのサイズは走りを決める大切な要素なのです。Hondaは、小気味よい走りを味わっていただくため、S660のためだけに直径350mmの小径ステアリングを専用開発。

本田技研工業株式会社より https://www.honda.co.jp/S660/ilovedrive/

すなわち、「クイックさ」を確保しつつ、「乗用車としてのある程度、万人受けするフィーリング」をHondaが考慮した結果、350mmが妥当であろうと判断したというわけだ。

しかしながら、S660の純正ステアリングは少し軽め。また、十分クイックではあるものの、もう少しスポーティなフィーリングにしたい、ということから、社外ステアリングに変更する人が多い。

実はナルディクラシック340mmに慣れてしまっていたので、350mmの純正ステアリングに変えると、「軽っ!」の一言。ただ、Honda純正だけあって「しっとり」としたフィーリングだ。純正なので当たり前だが、これはこれで、良い感じ。

ちなみに、S660βにαの本革ステアリングを移植した記事はこちら。同じ径ではあるが、素材が変わると操作性も向上する。

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ただ、ステアリングのグリップが「太すぎ」と思う。太ければいいってもんではなく、もう少し細身のステアリングが好み。

ナルディクラシック

ナルディはステアリングのメジャーなメーカーだ。旧車から新型車まで、スポーツ走行する方を中心にファンが多い。

ナルディクラシック・パンチングレザー。グリップの太さも丁度よく、握りやすい。スポーツ走行する際の定番ステアリングである。今回、お気に入りのステアリングである「ナルディクラシック」の340mmと、後輩からナルディクラシックの330mmを借り受ける機会に恵まれたので、ナルディクラシックの330mmと340mmを比較してみた。

S660のステアリング交換方法はこちら

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ナルディクラシック340mmと330mmの外観

上写真の左側が、330mm、右側が340mm。パッと見た目は違いがわからない。340mmはNBロードスター・ポルシェ987ボクスター・S660と使い続けている古いモデル。素材はパンチングレザーが使われているため、滑りにくい。通常のレザーも捨てがたいが、この辺は好みで。ちなみに、パンチングレザーの340mmは廃盤となっているようだ。

ナルディクラシック 330mmを試してみる

S660に330mmを装着して走行してみた。純正からマイナス20mm。狙い通りのクイックなフィーリング。スパッとノーズが入っていくので、ワインディング走行が楽しくなる。S660はもともとクイックな特性なため、サスの沈み込みを意識しながらステアリングを切っていくためには、少し慣れが必要かもしれないが、これはこれで楽しいセッティングだ。

また、純正よりステアリング操作の荷重は重くはなるものの、適度。トレッドがワイドだったり、純正以上のハイグリップタイヤに変更することを考えると、少し小さいかな、という印象だが、運転しにくくて危ないといった印象はもちろん皆無で、あとはあとは好みの問題だろう。

差し色の赤ステッチがシフトノブの色と合っていて雰囲気あるね。

ナルディクラシック 340mmに落ち着く

続いて、純正から10mmマイナスの340mm。ナルディクラシック340mmについては、公式HPでは以下のように紹介されている。

「36Φではマイルドだし、33Φはクイックすぎる」
けっして大きな声ではなくとも、そういったこだわりを持つパイロットがいることは事実。クルマやパイロットに備わる個性により、”最高のステアリング”とは、まさに十人十色。

エンリコ・ナルディの伝統を引き継ぐ職人達の手により新たに加わったのは、かつてないドライビング・フィールをもたらす「34Φ」のクラシック。古き良き伝統に、新たなる歴史が幕を開ける。

http://www.fet-japan.co.jp/nardi/n20070110.html 

こちらはかなり自分の好みのフィーリングだ。適度な重さと、適度なクイックさが丁度よい。

重さも、純正プラスα程度の変化となるし、自分が狙ったステアリング角にピタっと合わせることができる。もちろん、慣れているから当たり前だが、それを抜きにしても10mmの変化は割と大きいな、と実感させられる。330mmを購入しようか迷っていたが、自分には340mmがしっくり来る。

S660にピッタリのステアリング径は?

S660のキャラクターや、純正のステアリング特性を考慮すると、個人的な好みは340mmだった。適度にクイックなフィーリングだし、重さも丁度よく感じる。

ただ、せっかくステアリングを交換するのであれば、交換後の変化がわかりやすい330mmというのもオススメ。330mmだとカート感覚に近くなり、楽しい。

NARDI ナルディ)
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もちろんS660の純正ステアリングは350mmで十分小径。純正同等の350mmで、好みのステアリング形状に変更してみるのもこだわりがあってシブいな~といったところ。自分の好みで色々選んでみるのが良いだろう。

350mmであれば、MOMO派という方にはこちらがおすすめ。これは以前NB8Cに使っていて、今はアルトワークスで使用している。握りがNARDIより少し太めだが、断面が円形で操作し易い。

まとめ

運転する際に常に触れている場所の一つがステアリング。10mmのステアリング径の変更で、フィーリングが変わることがよくわかった。自分好みのステアリング径や、ステアリンググリップを探して、自分の好みに変更することで、クルマとの対話や、操作しているという充実感を味わうことができる。

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