Kスポーツの魅力とS660とアルトワークス乗り比べ

わが家には、S660(私の趣味車)とアルトワークス(妻の通勤車)の2台がある。軽自動車は日本独自の規制に合わせて作成された車両であり、日本の道路事情に適合している世界的には特殊な車両である。S660とアルトワークスはともに、軽い車体と小排気量のエンジンを搭載し、ドライビングプレジャーを手軽に味わうことができる、いわゆるKスポーツに分類されるクルマである。

この記事では、S660とアルトワークスの2台の比較を中心として、Kスポーツの魅力を紹介したい。あまり居ないと思うが「S660かアルトワークス、どちらを買おうかな~」と悩んでいる方がいれば参考になる、、、かもしれない。

目次

日本の軽自動車の規格とその魅力

軽自動車とは、排気量660cc以下。長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下の三輪および四輪車を指す。この企画は日本独特のもので、「日常の足」として利用されることを前提とした規格となっている。特に私が住んでいるような地方都市では「世帯の免許保有者の数=世帯が保持している車両の数」となっている。公共交通機関の発達が不十分な地方にとっては、軽自動車は生活必需品として位置づけられている。

なお、2021年最も売れた車は、トヨタヤリスが21万2927台。次いで、軽自動車のN-BOXの18万8940台ということからも、軽自動車の需要が高いことがわかる(ヤリスは様々な派生車種を同じヤリスでくくっているため、ちょっとなぁ…)。

維持費

税制

毎年発生する自動車税は、軽自動車であれば10,800円。日常の足として設計・販売されている軽自動車であるため、生活必需品として考慮された税制となっている。毎年発生する税金が少ないと所有車の負担も少ない。一方、普通車の自動車税はその排気量によって税額が変わるが、排気量1L以下の普通車は25,000円。排気量が増える毎に高額となり、6Lを超えると110,000円である。

燃費

燃費も、軽自動車であれば空いている郊外の道路で20km/L程度走るので、ガソリン代も安い。

パーツ

修理に必要なパーツ類も、大量に市場に出回っている軽自動車であれば安く作ることができる。普通車や外国車と異なり、パーツ代も安い。

例えば消耗品であれば、タイヤ・ブレーキ等はサイズも小さいので安価だ。オイルも高級オイルをいれたとしても量が少ないため安く済む。更に、チューニングパーツ類も台数が多ければ豊富だし、値段も抑えられている物が多い。

このように、軽自動車はそのコストメリットが大きいということも魅力の一つだろう。自分で弄って、走って、維持して楽しむ事ができる。

S660とアルトワークスのレビュ

S660

購入記したグレードはS660のβの一番安いやつ。2015年4月~2022年3月まで製造された。2シーターミッドシップ軽オープン。

あわせて読みたい
S660購入の経緯 S660を購入した。グレードは最安のβ。オプション全くなし。値引きもなし。 【車に求める条件】 S660の購入契約をしたのが987ボクスター売却後の2020年12月。 https://ku...

S660に関して購入から現在に至るまでの記事一覧はこちら↓

あわせて読みたい
S660関連の全記事 軽量・コンパクト・ターボ+オープンで、使い切れる楽しさを体現しているS660について、弄って走って楽しんでいる記録をまとめています

それぞれを比較すると…

全体的にS660の方が「金がかかっているナ」という感じ。実際、新車販売時の価格にもそうだと思われる。アルトワークスが新車価格154万円に対してS660のβグレードは203万円。新車時の価格差で約50万円である。また、アルトワークスと違い、専用設計の部品が多いためそれもコストに乗ってくるのだろう。ということで、価格ではアルトワークスの方が有利。すでに「売れている」アルトの部品を使い回すこともできる。軽自動車価格帯で50万円の差は大きい。

馬力は変わらない。軽自動車の業界自主規制によってどちらも64馬力。発生最大トルクの特徴が異なっている。

最大出力最大トルク
S66064/6,000[ ps/rpm]104/2,600[N・m /rpm]
アルトワークス64/6000[ ps/rpm]100/3000[N・m /rpm]

ただ、どちらも低回転から最大トルクが出る、という特徴は変わらないようだ。アルトワークスの方が「DBWで演出している」感じがあり、慣れが必要。S660の最大トルク104N・mは、2,600rpmから発生するのには驚き。

S660の方がアルトワークスに「勝っている」ところ

S660の良い部分。それはシャシー専用設計が故の重心の低さと、エンジンレイアウトだろう。ドライバーを中心にその後ろに重量物を凝縮するレイアウトは、ポルシェ・ボクスターとも通じる。

あわせて読みたい
手放した987ボクスターとの再会~S660との比較 車は色々な人を繋いでくれるものだ、という話。このブログを開設してしばらくして、987ボクスターのジャッキアップの記事に質問投稿があった。 https://kurumashikou.co...

これにより、旋回時にアクセルオンでのトラクションを確保するとともに、MR独特のフィーリングを軽自動車の車格で味わうことができる。日光サーキットのようなショートコースであれば、足回り含めてノーマル状態で45.146秒。

ノーマルとしてはこの程度かな、という感じ。自分のウデだと、ECUチューニングしたNAロードスターの耐久レース仕様(エアコンレス、重ステ、ドンガラ)での耐久レースの予選タイム自己ベストが43秒フラット。エアコンありのNB8Cで42秒前半なので、それと比べると直線のパワーが課題となるが十分楽しめる。タイムはチューニングを進めていけば徐々に上がっていくと思う。

あわせて読みたい
ノーマルS660で日光サーキット 2回目(2022/03/09フリー走行) 前回のサーキット走行からもう半年以上経過してしまった。前回の走行時に、コンディション把握、パワー不足、足回り変更が課題であった。まずは車両の状態を把握するた...

アルトワークスだと48.192秒。理由は美味しいところを使い切ってしまったタイヤと、カットしなかった制御介入によるものだと思われるため、正確な比較ができていないが、低重心から来る運動性能の高さはS660に分がある。ただし、チューニングによって様々な変更が可能なので、だんだんと戦闘力を上げていくという楽しみ方ができるのはアルトワークスも同様だ。

あわせて読みたい
マルチに使えて楽しい!アルトワークス(HA36S)のレビュ 「素」の車に近い楽しさを味わえ、かつ日常生活の足としても大活躍のアルトワークス。これからの時代、ハイブリッド車や電気自動車が台頭し、安全装備も充実して車重は...

それ以上に、軽自動車でミニサーキットを走ると、ライン取りや効率的な走り方を身につける必要があり、学びながら徐々に速くなっていく楽しさはどちらの車両でも得られることができると思う。

オープンカーの爽快さ

私は、2000年から現在に至るまで、ずっと何かしらのオープンカーを所有している。NB8Cから始まり、ポルシェ・ボクスター、S660と乗り継いでいる。風を感じて、星が見えるドライブと言うのは本当に気持ちがいい。

S660がアルトワークスに「負けている」ところ

S660を日常の足に使うという方は、買い物はとても困難である。フロントトランク下のスペースは雨が降れば荷物は濡れてしまうし、晴れていてもラジエータの熱で内部は暑くなる。その他の収納らしい収納は装備されていない。

一方、アルトワークスはスズキ・アルトと同じ室内広さを持つため、買い物も余裕で可能。わが家では1週間分の食料をまとめて買い出しに行くのだが、買い物カゴ2つ分をリアトランクに積むことができるので重宝している。子供の送り迎え等、日常使いもバッチリ。

ドライバビリティ

アルトワークスの運転の楽しさ

どちらも「走る楽しさ」を追求することができる車。アルトの場合は旋回挙動に移る時に外側リアのタイヤがグリップを意識し、旋回速度を適切にできれば、まるでFRのようなフィーリングで旋回していく。アクセルを抜けばフロントのグリップが増大して車両は内側を向くので安心して攻めることができるし、若干踏み込めば弱アンダー状態に終始する。オープンデフのFFという、今では最もポピュラーな車両構造なので、身につけたスキルは他の車輌にも応用が効くはずだ。

S660の運転の楽しさ

S660はというと、その重心の低さにより、旋回がとても気持ち良い。速度を上げていくとタイヤが滑り出す。その滑り方がMRレイアウトにしてはマイルドに感じられる。これはS660に取り付けられているタイヤの性能の高さによると思われるが、若干アルトワークスよりも早いタイミングでアクセルが踏める。きっちりと前に荷重を載せて、立ち上がり重視のラインを意識すると、安全に速く走れる。

MTのススメ

S660にはMTとCVTが、アルトワークスにはMTとAGS(オートギアシフト)形式が用意されている。アルトワークスのAGSや、S660のCVTはAT免許での運転が可能である。運転支援システムも、CVTやAGSモデルのほうが充実しているが。しかし、趣味性の高い車ということもありMTを勧めておく。自分でシフトチェンジするという時代はまもなく終焉を迎えると思えるが、それまでにMTを楽しんでおきたいと思う。

チタンノブのインストール完了

楽しみ方

攻めきれない高価なスポーツカーより、きっちり使い切れるKスポーツの方が速いこともある。高価なスポーツカーを飾る、ドレスアップするという楽しみ方を否定する気は毛頭ない。しかし個人的には「走って、回して、攻める」のが好きなのだ。軽自動車って遅い、なんて話を聞くことがあるが、少なくとも一定の条件下では、排気量や馬力が上の車を腕でカモる、みたいなことが可能。「維持費が安い=たくさん走れる。たくさん練習できる」からだ。

アルトワークスとS660どちらが良いか?で迷っている人が居るかどうか果たして不明ながら、4人乗りの車がマストで、日常の使い勝手を重視したいならアルトワークス。予算と家族の制約がなく、オープンの爽快感を味わいたいと言うのであればS660。駆動形式の違いはホントに好みなのでなんとも言えないが、個人的には軽自動車のキビキビした走りを味わえる峠の下りであればアルトのほうが好み。一方、ミニサーキットや上りの峠道であれば、S660の方が楽しいと感じる。

絶対的な速さはチューニングを進めればどちらも速くすることができるので、どちらが「速いから」ではなく、どちらが自分のライフスタイルや好みに合っているかで選ぶのが良いだろう。完全なセカンドカーとして家族などの理解があれば、S660。マルチに使いたいのであればアルトワークスをオススメしておく。どちらを買っても、痛快な走りを楽しめるので後悔することはないハズだ。

S660およびアルトワークスの購入

どちらも2022/05/22現在では新車生産は終了してしまっており、中古車で探すしかない。一時期は価格が跳ね上がったS660も最近は落ち着いてきている。アルトワークスに関しては価格高騰の兆しはあるものの、値上がりし過ぎた、という感覚でもない。S660やアルトワークスの取引価格も一時はプレミア価格がついていたが、現在のところだいぶ落ち着きを見せているようだ。

中古車購入にあたり不安となるメンテはしっかり行いたい。ただ、価格は抑えたい。そこで、ディーラー販売の中古車だけにこだわらず、割安の中古車を探すという選択肢もオススメ。今まで、ディーラー以外で中古車を何度も購入ているが、違法改造ではない限り、ディーラーに持ち込めばきちんとメンテしてもらえた。
レア車輌の場合は、争奪戦になることもあるので、中古市場で大きな流通量のある大手のガリバーなどが提供している中古車無料お探しサービスプログラムに申し込んでおけば、自分の希望にあった車輌を探してくれる。大手は流通量も多く更新が頻繁なので、希望だけ伝えてあとは待つだけだと楽。その間に別の中古車サイトを巡回して探すことで、効率的に希望の中古車に巡り会えると思う。



関連記事

あわせて読みたい
S660の2022年夏の中古市場価格とおすすめグレード S660は2015年に生産を開始。2022年の生産終了に伴い、一時期、プレミア価格がついていた。2022年夏現在のS660の中古相場とともに、おすすめグレードと今後の展望を勝手...
あわせて読みたい
マルチに使えて楽しい!アルトワークス(HA36S)のレビュ 「素」の車に近い楽しさを味わえ、かつ日常生活の足としても大活躍のアルトワークス。これからの時代、ハイブリッド車や電気自動車が台頭し、安全装備も充実して車重は...
あわせて読みたい
スイフトスポーツから考えるコンパクトスポーツの魅力とは スズキが作るスポーツコンパクト、スイフトスポーツについてクルマ志考的観点で考察したい。この手のクルマ、いわゆるコンパクトスポーツの魅力は、軽さを武器に格上の...
この記事をSNSでシェアする
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次